弁護士俵のブログ/ Abogado TAWARA Cristóbal Kojiro

ラテンアメリカの音楽が超好き

ブログの名前を変更しました

所属している事務所の代表から「たわらくん、SNSは実名でやるもんだよ。実名で。」と、半年くらい前に言われたことを思い出しました。

そんなわけで実名でやってみようと思います。

2022年のチャレンジとして入管法を人前で説明させていただくことをひとつ目標に掲げました。

1月は、とある外国人相談会のスタッフ事前研修で在留資格のお話をさせていただきました。

2月は、事務所にエクスターンシップ(研修のようなもの)でいらしていた大学院生向けに、退去強制の架空事例を用いて入管法のお話をさせていただきました。

3月も、とある団体さん向けにお話をさせていただく予定です。

 

人前で話をさせていただくとなると取り消しができず、嘘を話してはいけないので事前にたくさん準備が必要です。準備は時間がかかるし大変ですが、これまで実務でつまみ食いのように調べた、バラバラの知識を体系的にまとめなおす作業ができるため、頭の中が整理され、自分にとっても良い機会になりました。

また、お話をさせていただいた後は、あれはもっと上手に説明できたとか、これは自分でも理解が浅かったからもっと勉強しよう、などの学びがたくさんあります。

何より、受講者の皆さまから、私もこの分野でやっていきたいとお声がけいただけたことがとても嬉しかったです。

私は駆け出しでまだまだですが、駆け出しだからこそ、駆け出し同士で仲間を作ることができるのだとわかりました。

そんなことをしていたり、外国籍の方の事件をたくさん担当させていただいたりしていたところ、事務所の内外の同業者から、在留資格でちょっとしたことがわからないんだけど‥‥と質問をされるようになりました。

日本国内でも特に都内は外国籍の方の比率は高いらしく(統計があるようですが時間のあるときに探してみます)、日々の法律相談でも入管法や国際私法が関係するご相談は思いのほか多いみたいです。

ご質問を分析してみると、同業者のリサーチ能力はやはり高く、一定の解にはすぐにたどりついているが、しかし、それが体系的にどこに位置づけられており、なぜそうなるかまでは時間との関係でまだ調べられていない状況が多いようです。

そこでサクッと、この法律のこの規定はもとをたどるとこういう趣旨であって、他にこういう規定があるんだけども、それとの関係で今回の規定があって、だからこれはこうなると答えられる人が重宝されるなるほどそういうことなんだなと思いました。

そんなわけで腰を据えて勉強をするのは良いことだなと思う日々です。

研修の講師

来年、うちの教会の方が実施を企画している外国人向け法律相談会でボランティアしてくださる通訳の方向けに研修を担当させていただくことになった。
研修の内容は入管法関係の法律相談で使われる専門用語混じりの会話の正確な訳し方である。
以前、別の相談会でせっかく熱意あるボランティアの方が根気よく訳して下さっていたけど専門用語は難しいみたいで、あ…じゃあここは僕が英語でやります…みたいになってしまうこともあったし、入管法をご存知なくて特に主語が間違ってる誤訳も何度かあってこれは非常に問題だと思った。
例えば「退去強制令書」はa written deportation orderであることとか知らないと単語すら出てこないし、法の仕組みを知らないと誰が出すものかもわからない。
年末年始はNetflixの試聴に全力を注ぐ予定だったので、それとの関係で若干の問題があるがしかし良いお話をいただけてとてもありがたい。

もうすぐ2年目

気が付けば今月で、弁護士登録をしてから1年が経ちます。

多くの経験をさせていただきました。

中でも登録前から、また司法試験の受験生だったときから強く希望していた入管関係の事件を多く担当させていただいたことは非常に幸運だったと思います。

しかし現実はそう甘いものではなく、お金のことを強く意識した1年でした。

人権擁護を使命とする弁護士(弁護士法1条1項)は個人事業主でありビジネスマンなので、やはりお金のことを考えないといけません。

在留資格が危うい方や着の身着のままで日本に逃れてきた難民の方からはどうしてもお金をいただくことは難しく、たしかに日弁連からある程度の援助はいただけますが、決して十分とは言えません。しかしだからといって放っておくわけにはいきません。

どうにかマネタイズできないものかと考えた結果、通訳費用の出費を抑えることでお客さんの負担を減らすことができることがわかりました。

そこで、ひとまず入管法の説明やその他のやり取りを自分が英語・スペイン語でできるようにしようと考えました。

これを実践してみたところ、とりあえず退去強制手続と難民認定についてはひととおりできるようになりました(ポルトガル語は準備中)。

思わぬ副産物として、ある程度資力のある方からの在留資格のご相談についても英語やスペイン語で説明ができるようになりました。

なんならこれができる弁護士は日本でもあまり多くなく(第一線で活躍されるベテランの大先生方の足元にも及びませんが)しかし弁護士1年目でこれができる人は他にはなかなかいないであろう、たぶんそうだろうと思います。

そして、このスキルは渉外家事事件や一般民事事件にも転用できることがわかりました。

1年目で専門性の萌芽が少しだけ出せたことはとても良いことでした。

将来的には、外国出身の方を雇う中小企業さんを相手に、在留資格のお手伝いをしつつ、人権を守ることは何より大事なことであるからそれを企業の価値にしよう、ポジティブなメッセージを発していこうとアドバイスできるようになりたいと思うようになりました。

あるいは自分でそういう会社を作ってしまうのもありかもしれません。今考えているのはビリヤニ専門店です。

また、入管事件をやり続ける多くの先輩方に良くしていただき、とても刺激を受けました。

言ってしまえばなかなかお金にならない分野であるのに、どうしてそこまで頑張れるのだろうと不思議に思うこともありました。ましてやただの同業者同士であって、しかもお金にならないのだから、お付き合いをする金銭的なメリットもないはずです。

しかし、同じ目的を共有してそれに向かって一緒に突き進むことに利害関係はなく、ただただ一緒に頑張ろうと互いを励まし合える仲間の関係であることがわかりました。

弁護士は個人事業主でありビジネスマンではあるけれども、この局面では人権擁護を使命とすることが上回る、そういう関係性が作れる仕事であることがわかりました。

私はこの仕事に就いて良かったと思いました(日々の業務は大変ですが)。

 

ジーザスが行方不明

普段お世話になっている先生が紹介されていた、仮放免で生活をされている方のドキュメンタリーを視聴させていただきました。

(ドキュメンタリーのURLを載せたいけどこちらでは省略します)

最後の場面で出演者の方が歌っていらした”There was Jesus”という曲ががとても印象的でした。 私は今年のイースターに洗礼も受けたはいいものの、この仕事をしていて信仰が揺らぎまくっていました。

いったいジーザスはどこで何をやっているんだよと、そんなことを思う日々が続いていました。退去強制令書(日本から出ていかないといけない)が出てしまった方にそれでも私は神に祈っていると言われ、でもそんなこと言われても俺はどうすりゃいいんだよ…と思うこともありました。

しかしこのドキュメンタリーを観させていただいて、考え方が大きく変わりました。 私はこれまで自分の目線でJesusを探していたけど、結局見つからなくてJesusを見失っていました。 でもこの動画の最後で出演者の方が、待ち受けているご自身の未来がどれだけ辛いものであるかに十分に理解されている方が、There was Jesusという曲を歌っておられました。

私には見つけることができなかったJesusを、この方は見つけておられたのです。 自分の信仰の浅はかさを思い知りました。自分の目線で探していたけど見つからなかっただけでJesusはどこに行ったんだよと、勝手に行方不明扱いをしていました。

きっと私の仕事はJesusを見つけた方やJesusと共におられる方に会いに行くことなのだと思いました。 その先で何をするかはその方の声をよく聴くことに尽きるのだと思います。

 

もし教会で信徒説教を頼まれたらこの自分の浅はかさをお話しして、タイトルは「ジーザスが行方不明」にしようと思います。

アフガニスタンについて思うこと

「発信するんだ」「言葉の持つ力を信じるんだよ」

所属している事務所の代表に言われた言葉です。

まったくその通りだと思ったので筆をしたためることにしました。

本当にイケてる代表がいる事務所に入れて良かったと思いました。

(気恥ずかしくて本人を前にしては言えない)

なお、代表は実名で発信するべきだと言っていました。

なお「びゃお」は中国語の普通話読みでいちおう実名です。

 

米軍がアフガニスタンから撤退することが決定されました。

昨日も今日も事務所でこう言われました。

「びゃお君(ぼくのこと)、どうすんの。大変なことになるよ。」

「びゃお君(ぼくのこと)、すごく忙しくなるでしょう。」

 

アフガニスタンからの難民の方の件がこの先ものすごく増えることになる、

そういう意味です。

これは大変なことになる。自分もそう思いました。

多くのアフガニスタン難民が日本にいらっしゃる。

同時に数年前の入管での出来事が思い当たりました。

昔読んだ記事が今も残っていました。

www.refugee.or.jp

 

果たして入管は変わったのでしょうか。

 

独自の解釈を採用して保有個人情報を代理人により請求することを認めない

仮放免の際には品川入管だと窓口で必要書類を渡され→JR田町駅の銀行まで移動させられ保証金を納付し→また入管に戻って納付書を提出しないといけない(キャッシュレス決済って知ってます?嫌がらせですか?)

弁護士が正式に依頼者から委任を受けて手続きを代理しているのに手続きの状況を説明しない

被収容者が病院に行きたいと何度も訴えているのに連れて行かない

難民不認定処分に対する異議申し立ての棄却を告知した翌日チャーター機で難民申請者を強制送還する

仮放免許可申請をして1か月以上放置されて許否が決定される

他にたくさんありますが全て現在の話です。

 

受験生の時にマクリーン判決を読んで何だろう何を言ってるんだろう、え?これ本当に最高裁判例?いやおかしいでしょどう考えても‥‥

その程度の実感しかありませんでした。

しかし実際に実務をはじめてみると、外国人の人権保障は在留制度の枠内でしか与えられていない現状(上に書いたことですね。他にもたくさんあります。)をひしひしと感じています。そしてその度に強く怒りを覚えます。

それでは自分が入管側の立場であればどうするでしょう?

有権者でない人の意見は外交に支障がない程度に聞いておけばよい」

「そもそも外国の大使館も領事館も在留資格がない人には冷たいし外交問題にならない」

「裁判所も入管の判断に追随するからほっといていい」

「いつまでも日本にいるかどうかわからない人に割くリソースはない」

いくらでも手を抜く理由が出てきます。

でもおかしくないですか。外国から働きに来ている人や日本に移住する人を受け入れたのは誰ですか。

同じ人間に対する態度がそれですか。

有権者の無関心が現に人を傷つけていることは十分わかっているでしょう。

 自分たちが作った国のかたちに対していつまで見て見ぬふりを続けるのですか。

そしてこのまま無関心を貫けば、きっとあのときアフガニスタンからの難民申請者に対して行われたことと同じことが繰り返されるでしょう。

だから今できることをしないといけない。

人が人として尊厳をもって生きられる世界で生きたい。

入管法とそのまわりの勉強

入管法とそのまわりを改めて勉強しています。

 

○外国人刑事弁護マニュアル

 最近買った本です。

 やや古い本だからと読むのをためらっていたがためらう意味はなかった。

 実務でどう動くべきかがわかる良い本でした。保釈を諦めてはいけない。

 ○入管訴訟マニュアル

 ロースクール在学中に買った本です。改めて読み直しています。

 ○現場で役立つ!外国人の雇用に関するトラブルQ&A

 無用なトラブルを避けるために必須の本だと思いました。 

 ○詳説 入管法の実務

 結構高いので買うのをためらっておりましたが覚悟を決めました。

 買って大正解でした。非常に詳しく書かれている。圧倒的情報量。 

 ○先生!日本(ここ)で学ばせて!ー強制送還される子どもたち

 約30年前の運動を記録した本を探していました。 

 

半年

びゃおです。

弁護士登録をしてからそろそろ6ヶ月になります。

仕事を始める前は「司法試験も受かってるし実務とか楽勝でしょ六法に全部書いてあるし」などと思っていましたが全然そんなことはありませんでした。

戸籍←わからない

住民票←わからない

契約書←わからない

警察に行くときの持ち物←わからない

裁判所に提出する書類←わからない

(以下エンドレス)

わからないことは調べてそれでもわからなければ人に聞くを繰り返していたらだんだんと、

○このへんはお客さんから聞き取らないとわからないから調べなくてもいいとか

○ここまで調べてもわからなかったら先輩に聞いてみてもよいとか

○先輩このタイミングだったらサクッと聞けそうとか

などの塩梅がわかるようになってきました。

わかるようになってきて時間に余裕もできてきました。

あと負荷が高い仕事が何であるか、要するにとにかく迅速に動かないといけないし頭をめっちゃ使うしそのへんの本に書いてないことだらけの刑事事件とかなんですが、もわかるようになってストレスとの向き合い方も身につきました。

これまでに担当した仕事は思いつく限りで

○某国政府に損害賠償請求

ブロックチェーンの契約書作成

○難民申請

○ビザ関係のご相談

○判決文をスペイン語に翻訳

○法律相談を英語で通訳

○仮処分決定の英訳

英語圏の方の認知請求

○離婚、遺産分割、相続放棄

○建物明渡請求の裁判

社会福祉まわりのご相談

○刑事事件3件(裁判含む)

○資金決済法関係のビジネスモデル検討

○自己破産

○国籍法についてのシンポジウムの準備

電子署名法についてのリサーチ

などです。

半年で多くの経験をしました。

これらは私にしてみれば私の経験ではありますが、当事者の方にしてみれば人生に一度しかないであろう、人によっては思い出したくもない経験かもしれません。

果たして自分の手柄のように語って良いのでしょうか。

ひとつ言えることは、私は責任をもって取り組みました。ベストを尽くしました。

依頼者の皆さんが私に対して弁護士として成長してもらいたい、いつかまた頼みたい、そう思っていただけるように仕事をしてきました。

だからきっと過去を振り返り、それらを自分の経験として語る資格があると思います。

逆にひとつひとつの案件に責任をもてなくなったら弁護士の仕事を語る資格を失うのだと思います。

仕事に少し余裕ができてきたのでぼちぼちスペイン語とかポルトガル語を使った仕事に手を広げたい。とはいえ中国語の方がかっこいいし好きなので中国語を使った仕事をしたいとも思っています。あと留学もしたい。